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日本の田んぼを守る酒蔵になる

福島県郡山市田村町に位置する仁井田本家さん。創業はなんと1711年で江戸時代にまでさかのぼります。初代 仁井田氏は当時の守山藩の藩主から酒造りを命じられ、現在の地で酒造りをスタートされました。田村町の豊かな自然とともに、十八代にわたって代々酒造りが行われています。

1967年に日本初となる「自然酒」を発売、創業300年を迎えた2011年には日本初の100%自然米、100%純米造りの「全量自然米蔵」となりました。お米のふくよかな旨みが魅力の「しぜんしゅ」、綺麗で瑞々しい「おだやか」、やわらかでシャープな流通限定酒「田村」を醸しておられます。

今回は「日本の田んぼを守る酒蔵になる」という使命を持って日々酒造りに励んでおられる仁井田本家さんの魅力の源泉を探るべく、田村町に行ってまいりました。

田村町に入り、まず目に飛び込んでくるのは美しい自然風景。山というよりは穏やかな丘陵地帯にある「森」という印象を受けました。行政の「市街化調整区域」にも指定され、自然環境を保全するため建物の建築が制限されている地域でもあります。

蔵に近づくにつれて、大げさでなく空気がやわらかなクッションのように身体を包んでくるような感覚を覚えました。

緑豊かな葉桜の先に広がる美しい田園風景。その先に見えるチャーミングな立て看板が指し示す小高い丘の上に、仁井田本家さんは位置しています。

蔵を案内いただいたのは、十八代目 蔵元杜氏の「仁井田 穏彦(にいだ やすひこ)」氏。仁井田家では代々「穏」の文字を受け継ぐ慣わしがあり、同蔵の酒「穏(おだやか)」の名付けの由来にもなっています。

仁井田 穏彦さんはその名の通り、優しく穏やかなお人柄で、自然と人々から支持されるような、大らかなオーラを身に纏った方でした。

仁井田さんからまずお話しいただいたのが、「夢」についてのお話しでした。この、まず先に「夢」を語られるというところが、日本の山里から現在世界を舞台に活躍の幅を広げる仁井田本家さんのエネルギーの源なのではと個人的には感じました。

「真に豊かな田舎になる」
「発酵のプロフェッショナルになる」
「自給自足の蔵になる」
「田村町の方々に仁井田本家があって良かった!と言って頂ける蔵になる」
(※一部要約しています)

「夢」をエネルギーの源に、さまざまなアクションを実施されている仁井田本家さん。

蔵を出て連れて行っていただいたのが、蔵の周囲に広がる6haの自社田です。こちらでは「神力」と「雄町」を栽培しておられます。

立派に育った稲、そして自然栽培ならではの生物多様性を感じる立派な田んぼでした。現在は有機肥料も使わず、稲わら等を田んぼに返す「無肥料自然栽培」を実践されています。

仁井田本家さんの酒造りを語る上で、個人的に興味深く感じたのが「水」に関してです。

蔵を取り巻く地層は花崗岩土壌となっています。自社田近くの古い地層からはミネラルが豊富な「中硬水」(竹の内井戸水)が、山手にある新しい地層からはやわらかな「軟水」(水抜きの湧き水)が湧き出ているのです。

酒造りにおいては、「中硬水」を使って「しぜんしゅ」を、「軟水」を使って「おだやか」を造るといったかたちで酒質に応じて仕込み水を変えておられます。また、水を守るために、所有されている100haの山の管理も大切な仕事なのだと教えていただきました。

造りにおいても仁井田本家さんならではの特徴が目白押しです。

「しぜんしゅ」において実施される蔵付きの菌で自然に発酵させる「酵母無添加での酒造り」。そして、仁井田本家さんならではの「汲み出し四段」製法です。

通常の日本酒造りでは三段仕込みといって3回に分けて日本酒のベースとなる醪(もろみ)を造っていきます。「汲み出し四段」製法は、しっかりと発酵を進めた後に4回目の工程として蒸米を入れる手法です。この手法により、出来上がる酒は特有のまろやかでふくよかな甘みを感じる、いわゆる芳醇旨口な酒質となります。

自然酒がはじめて世に出た1960年代は高度経済成長期の真っ只中。肉体労働が主たる時代であった事もあり、当時は疲れた身体を塩をなめながら甘い酒を飲む事で心と身体を癒していたのだとか。自然酒を汲み出し四段で造る事で芳醇旨口に仕上げていた背景には、人々の疲れを癒すための酒を造りたいという想いが根底にあったのです。こういった背景を今に受け継ぎ、仁井田本家さんでは現在も「汲み出し四段」の製法で「しぜんしゅ」を造っています。

仕込みに使われるタンクは、自社山から採取した杉を使って作られた木樽も使われていて、ゆくゆくは全量自社山の杉で作られた木樽仕込みとなる予定です。山の自然環境の好循環を育む為に2024年から植樹もされるようになりました。将来的に自給自足の蔵になるためのアクションが、一歩一歩着実に進められているのです。

酒を仕込むタンクのある部屋には、大きなピアノが置かれています。(※写真奥)

このピアノは女将さん(「仁井田真樹」氏)の相棒です。ブランディングと広報担当を務める女将さんは、ジャズピアニストでもあります。なんと蔵では醪にジャズを聴かせておられるのだとか。アドリブやセッション、そして気分によって毎回演奏が変化していくのがジャズの特徴です。仁井田本家さんの日本酒が同じ造りでも年によって味わいの個性に変化があるのは自由なジャズの精神がお酒に息づいているのでしょう。

そんな仁井田本家さんの日本酒。
個人的イチオシの楽しみ方は”燗酒”です。

あたためることでふくよかな甘みが優しくふわ〜っと広がり、まさしく身体に沁み入る優しみと癒しの酒になりますよ。

辛口党の方に強くオススメさせていただきたいのが、流通限定酒の「田村」です。
こちらは自社田の無農薬無肥料栽培の「雄町」を酵母無添加蔵付酵母仕込みで造られています。これがまたまあ旨い!キレも良く幅広くお料理にも合わせてお楽しみいただけます。

「もともと林業を営んでいた十六代目は、80年前に杉を植えてくれました。今では立派な杉林へと成長し、木材の提供とともに村の水源も守ってくれています。自然酒を考案した十七代目は、コンクリートではなく木造の立派な仕込み蔵を建ててくれました。それも子の代、孫の代できっと役に立つことを見越してのこと。『100年後に誇れるものを造る』という精神が、歴代の蔵元には脈々と受け継がれてきたのです。」と仁井田さんは言います。

最後に、仁井田さんが繰り返し口にされていた言葉。

「自分は次の世代に向け、自分は何を残せるか。」

地域や日本の未来に向け、信念を持って酒造りに励む仁井田さんの姿に多くの刺激をいただきました。仁井田本家さんの一本の酒の向こう側からは、美しい自然環境とその環境を未来に繋ぐ為のたくさんの物語を垣間見る事ができました。

想いのあるお酒(プロダクト)を「買う」、「飲む」事は、より良い未来に向けて環境を繋いでいく活動に応援の一票を投じる事になる、と改めて思いました。(※もちろんノミヤマ酒販のお取り扱いのある他の蔵元のお酒も含めて)

皆さまもこの機会に是非!日々の癒しに仁井田本家さんの日本酒をお試しいただけますと幸いです。

仁井田本家さんのラインナップはこちら↓↓↓
https://nomiyama-shuhan.shop/?category_id=681f022053ff9f4e5d042619