正射必中(せいしゃひっちゅう)の酒
福岡を代表する"燗酒”蔵「杜の蔵」さん。
福岡県筑後地方の伝統文化である酒粕(粕取)焼酎造りからその歴史がはじまりました。
2005年には九州で初めてのオール純米酒の蔵元になり、よりピュアでナチュラルなプロダクトを世に放つ存在として知られるようになりました。
純米酒も焼酎も1級品。そして素晴らしい調味料も造っておられます。
派手さはなくとも飲み手の方々の日常にさりげなくあるようなお酒が魅力で、飲み飽きせず、ずーーっと飲めるお酒を醸しています。
熟成酒に力を入れており、現代の食と楽しめる日本酒の独楽蔵シリーズは特にお燗酒が最高です。
今回は堅実なプロダクトを世に放つ「杜の蔵」さんの魅力に迫ります。
蔵に到着し、まずご案内いただいたのが「杜の離れ」です。
こちらは杜の蔵さんの酒造りを中心とした取り組みについてお客さまに知っていただくための場所となります。
お客さまにお酒の魅力をお伝えしたり、試飲やお買い物をしていただいたり、イベントを開催したり、 見学気分が味わえる展示コーナーや、お酒とおつまみのセット、離れ限定オリジナルスイーツなどもご用意されております。
杜の離れから見える中庭の風景がとにかく素晴らしく、何と昭和初期の風景のままなんですよ。
是非三潴へお越しの際には是非「杜の離れ」に寄ってみられて下さいね。(三潴駅から徒歩約3分です)
杜の蔵さんの創業のきっかけとなった「酒粕焼酎」造り。実は地元の農家さんへの肥料を造る事が目的ではじまった事業なんです。
江戸から明治にかけて、稲作の肥料として日本酒の搾り粕である酒粕が注目されておりました。ただ、酒粕のままだとアルコールを含むので肥料になりません。そこで酒粕に熱を加えることでアルコールを飛ばし、残ったいわば「焼酎粕」を農家さんたちは田んぼに撒いていました。
米作り発祥の地としても知られる北部九州。当時、筑後の地には今以上に酒蔵が点在していました。杜の蔵さんは日本酒蔵から副産物である酒粕を購入し、酒粕から生成した「肥料(焼酎粕)」を農家さんへ供給する事を生業としていたのです。
本来ならば、アルコール(焼酎)を生成する事を目的として蒸留する事が多い中、その結果生成される焼酎粕を目的にしていたという点がとてもユニークでおもしろいですよね。
生成されたアルコールは農作業にたずさわる方々と飲んでいたのだとか。しかしながら、明治32年に酒税法が改正されて生成されるアルコール(焼酎)に対してルールが明確になる事になったのがきっかけで、酒税法改正の1年前にあたる明治31年に正式に酒造蔵として創業されました。
現在では時代の流れと共に焼酎粕を田んぼに撒く農家さんはおられませんが、杜の蔵さんでは自社のルーツを伝承していく為に、蔵の裏にある自社田にて、焼酎粕を使った酒米作りを実施しておられます。
もちろんそれだけではありません。創業当時の木製せいろと銅カブト釜を使った古式蒸留を復活させ、当時の風格と品を兼ね備えた酒粕焼酎である「弥久銅カブト」を製造、その焼酎粕を肥料にして蔵の裏にある自社田に撒いておられます。
自社田では福岡の県産品種「夢一献」を栽培されていて、自社の日本酒に使われているんですよ。
「循環」の哲学を実際に形にされている素晴らしいお取り組みだと思いました。
ちなみに古式のセイロ式蒸留法を活用した「弥久純粕焼酎」や「弥久極まろ三年梅酒」もめちゃくちゃ美味しいので是非お試しいただきたいです。
こちらが杜の蔵さんの木製せいろと銅カブト釜を使った古式蒸留器です。撮影当時はオフシーズンの為、パレットが挟んでありました。
杜の蔵さんの蔵の裏にある小さな自社田です。毎年、循環型の肥料である焼酎粕を散布した後に、杜の蔵さんのお酒の愛飲家の方々と共に手植えをされます。
杜の蔵さんの魂とも言うべき日本酒「独楽蔵」銘柄を熟成させるタンクです。こちらの部屋は年間を通して15度に設定されております。
珍しいのが、こちらのタンクは窒素を充填させてお酒を熟成されているという点です。
この熟成方法は、現5代目蔵元の森永さんが独楽蔵の味わいを追求していく中で長年に渡り実施していた熟成試験の賜物であり、2006年から採用されています。
この熟成方法にする事で、飲み頃になるまでに時間はすごくかかってしまいますが、独楽蔵シリーズの最大の魅力である【独特のやわらかさを兼ね備えた優しい熟成酒】へと育ってゆくのです。
(左から)
独楽蔵 円熟純米吟醸 玄
1800ml/¥3,850(税込)
720ml/¥1,980(税込)
独楽蔵の真骨頂。熟成によるスモーキーな風味と酸、ややスパイシーな円熟香を感じるお酒で身体に染み渡ります。
独楽蔵 然 純米酒
1800ml/¥2,750(税込)
720ml/¥1,650(税込)
独楽蔵シリーズで最もライトな一本。涼しげでほのかな香りが漂う軽やかで優しい口当たりのお酒です。あっさり系を中心に、料理を引き立ててくれる仕上がりです。
独楽蔵 燗純米
1800ml/¥2,750(税込)
燗酒の定番純米酒です。じっくり低温熟成により生まれる優しくふくよかな旨味やキレは、飲み飽きせずにお食事ともよく合います。心も身体もほっこりあたたまります。
独楽蔵 TAHITO
1800ml/¥4,180(税込)
720ml/¥2,090(税込)
独楽蔵の進む道を照らすお酒です。(手火(たひ)が名前の由来となっています)
杜の蔵らしいピュアでクリーンな生酛の酒を醸したいという事で誕生したお酒となります。
(※生酛造りは江戸時代に確立された日本酒の伝統的な製法の事です)
糸島の契約農家さんと共に育てられた無農薬の山田錦で造られています。
これがまあうまいんです!
一般的な生酛造りのお酒は複雑味に富んだ滋味深い味わいが魅力的ですが、「独楽蔵 TAHITO」はクリーンな口当たりと心地よい滋味が骨格を支える素晴らしいバランスに仕上がっております。
上質さと無骨さを兼ね備えたイメージで、車で例えると「メルセデスベンツGクラス」のような酒です。(わかりにくかったらすみません)
クリーンで深い味わいは、生酛のお酒のビギナーさんにもとてもオススメです。もちろん燗酒が最高ですが、常温も美味しいですよ。
是非ご家庭のお料理にも合わせてお楽しみいただけたらと思います。
お肉料理、中華などの濃い味やスパイシー系のお料理とは特に最高の相性ですよ。
是非是非!お試し下さいませ。
森永さんに最後にご案内いただいたのがなんと蔵の中にある弓道場です。
実は森永さんの祖父(三代目)と曽祖父(二代目)は、弓道の最高位である10段だったそうです。(つまり弓道界のトップ!)
今でも弓道場は現役で使われていて、5段以上の上級者の方々が練習をする場となっています。(もちろん現当主の森永さんもたまに弓を引かれるのだとか)
この弓道場にちなんで、杜の蔵さんの春先の新酒は「一の矢」、夏の酒には「二の矢」という名前になっています。
一流の弓矢の名手の蔵だからこそのネーミングなので、とてもフィットしていて改めてカッコいいなあと思いました。
弓道の世界には「正射必中(せいしゃひっちゅう)」という言葉があります。
「当てようとして当たらない、正しく引けば結果として当たる」という考え方の事です。これは、当てることを意識するのではなく、弓を引く正しい動作(正射)をすれば、結果的に的に中たる(必中)という弓道の精神を表しています。
つまり、当てること(流行の酒を造る)にとらわれず、正しいフォームと精神(自分達が信じる酒)を追求することが大切だということです。
熟成してお食事の味わいを押し上げる酒質の「独楽蔵」は、昨今の日本酒のトレンドである"一口目から美味しい"、"グラス1杯の驚き"がある、というインパクトのある酒ではござません。
しかしながら、バラエティー豊かな"現代の私たちの食事の場"をさらに豊かなものにしてくれる銘酒であることは間違いありません。
是非この機会に、博多が誇るオーセンティックな純米酒「独楽蔵」シリーズをお試し下さいませ。
杜の蔵さんのオールラインナップはこちら↓↓↓
https://nomiyama-shuhan.shop/?category_id=611f6fa0f604a97cb88066a0